VINTAGE LIFE MAGAZINE / 加藤住建
ポートランドスタイルの家づくりとは?
長野とポートランドのリビルディングセンターに学ぶ、ヴィンテージな暮らし
新品だけで整えた空間より、少し傷のついた木の方が心を落ち着かせることがある。
使い込まれた真鍮の取っ手、誰かの時間を受け継いだ古材、朝のコーヒーの湯気、レコードから流れる乾いたギター。
ポートランドスタイルの魅力は、見た目のデザインだけではなく、ものを大切にしながら、自分たちの感性で暮らしを編集していく姿勢にある。
今回は、長野やアメリカ・ポートランドにあるリビルディングセンターの思想を手がかりに、加藤住建が考える「ヴィンテージな暮らし」としてのポートランドスタイルを特集する。家を買う話ではなく、10年後にもっと好きになっている日常の話をしたい。
施工写真:外観
深い軒の下に、古道具屋で見つけたベンチと鉢植えのオリーブ。外と内のあいだに、余白のある居場所をつくるのもポートランドスタイルの大切な要素。
ポートランドスタイルは、流行の名前ではなく「手ざわりのある暮らし」
ポートランドスタイルと聞くと、黒いアイアン、ラフな木、タイル、インダストリアルな照明を思い浮かべる人も多いかもしれない。もちろん、それらは象徴的な要素ではある。でも本質は、もっと静かなところにある。
たとえば、朝はお気に入りのマグでハンドドリップのコーヒーを淹れること。窓辺には枝ものと観葉植物が置かれ、棚には古本とレコードが並んでいること。週末には古着屋やアンティークショップを覗き、必要なら自分で棚をつくり、家具を直しながら使い続けること。暮らしを「買って完成させる」のではなく、時間をかけて育てる感覚。そこに、ポートランドスタイルの芯がある。
加藤住建がこのスタイルに惹かれるのは、岐阜の風土ともどこか響き合うからだ。木のぬくもりを素直に感じること。季節の変化を窓や軒先で受け止めること。広さより、居心地のいい居場所を丁寧に重ねること。新築でも、最初から少しこなれた空気が漂い、住みながらさらに味わいが深まっていく家。そんな住まいは、写真映えのためではなく、日々の体温のためにある。
POINT
ポートランドスタイルの中心にあるのは、見た目の記号ではなく「素材が育つこと」「自分で手を入れること」「古いものを敬うこと」。この3つが揃うと、空間は急に暮らしの顔を持ちはじめる。
長野とポートランドのリビルディングセンターが教えてくれること
ポートランドスタイルを深く理解するうえで欠かせないのが、リビルディングセンターという存在だ。役目を終えた建材や家具、道具、照明、金物、扉、窓枠などを回収し、次の使い手へとつなぐ場所。いわば、住宅の部品や暮らしの記憶が集まる大きな図書館のようなものだ。
アメリカ・ポートランドには、サステナブルな価値観とDIY文化の土壌があり、古いものを壊して終わりにするのではなく、再編集して使い続ける感覚が根付いている。大きな木製ドアが別の家の玄関になることもあるし、使い込まれた照明が新しいダイニングの主役になることもある。
一方、長野のリビルディングセンターもまた、日本の暮らしの中でその思想を育てている。古材や古道具に宿る時間を丁寧に受け取り、ものの背景ごと次へ手渡していく姿勢は、単なるリユースではない。使えるから残すのではなく、残したい理由があるから使う。その考え方にこそ、暮らしの美しさがある。
加藤住建が家づくりで大切にしているのも、まさにこの感覚だ。新しく建てる家であっても、時間を切り捨てないこと。古材やヴィンテージ家具が似合う余白をつくること。住み手が少しずつ棚を足したり、照明を替えたり、植物を増やしたりできる自由度を残すこと。完成した瞬間がピークではなく、暮らしながら深まる器としての家。それはリビルディングセンターの思想と自然につながっている。
| 視点 | 本場ポートランドの感覚 | 長野のリビルディングセンターから感じること | 加藤住建の家づくりへの反映 |
|---|---|---|---|
| 素材への考え方 | 古材や再利用建材を積極的に活かす | 背景や物語ごと引き継ぐ | 経年変化を楽しめる木や左官材を選ぶ |
| 暮らし方 | DIYやセルフリノベが身近 | 手をかけながら住み継ぐ文化 | 住んでから手を入れやすい余白をつくる |
| 空間の魅力 | ラフで自由、肩の力が抜けている | 古さが温度として残る | 整えすぎず、素材感を主役にする |
| 価値観 | サステナブルで個性を尊重 | 直しながら使う喜びを大切にする | 流行より、10年後の愛着を優先する |
家の中に、街のカルチャーを少し持ち帰る
ポートランドスタイルの魅力は、建物の外観や内装だけで完結しない。むしろ、家具や植物、音楽、道具、休日の過ごし方までが自然につながって、ひとつの景色になるところにある。
家具は「揃える」より「出会う」
ダイニングテーブルだけは無垢の木でしっかりと。椅子はあえて全部揃えず、古道具屋で見つけたものや、張地の異なるものを混ぜてもいい。新品の家具で統一された空間は整って見えるけれど、少しばらつきのある景色の方が、人の気配を感じやすい。ポートランドスタイルは、完成度の高さよりも、暮らしの層の厚さが似合う。
照明は、明るさより影の美しさを選ぶ
真鍮のペンダントライトや、ホーローのシェード、少し工業的なブラケット照明。夜の家は、昼の延長ではなく、別の表情を持っていてほしい。部屋全体を均一に照らすのではなく、テーブルの上だけが柔らかく明るいとか、壁際に影が落ちるとか、その不均一さが空間を落ち着かせる。レコードをかける夜には、少し暗いくらいがちょうどいい。
植物は、インテリアではなく同居人
フィカスやパキラのような定番もいいけれど、枝ぶりのきれいなユーカリや、少し無骨なサボテン、ハーブの鉢植えも似合う。土の匂いがして、葉の向きが日ごとに変わる。それだけで室内に季節が入ってくる。木の家と植物は相性がいい。素材が呼吸している空間では、植物も作り物みたいに浮かない。
コーヒーと音楽が、家のテンポを決める
朝、ミルで豆を挽く音。ケトルから立ちのぼる湯気。お気に入りのカップに注いで、窓辺でひと息つく。その数分があるだけで、一日は少し整う。ポートランドスタイルの家には、そんな時間が似合う。音楽も同じだ。ブルース、ジャズ、フォーク、インディーロック。ジャンルは自由だけれど、少し空気を含んだ音が木の空間によく馴染む。棚にレコードが並んでいるだけで、部屋には「聴くための余白」が生まれる。
古着やデニムの似合う部屋は、少しラフでいい
洗いざらしのシャツ、色落ちしたデニム、キャンバス地のトートバッグ。そういうものが自然に置かれて絵になる部屋は、素材の表情が豊かな家だ。無垢の床に小さな傷が増えても、それが嫌ではない。玄関にアウトドアブーツが並び、壁にキャップやジャケットを掛けていても、それが生活感ではなく、その人らしさとして見えてくる。
施工写真:リビング
無垢床の上にヴィンテージラグ、壁際にはレコード棚。大きく飾りすぎず、好きなものを少しずつ重ねると、部屋は住む人の輪郭を帯びてくる。
ポートランドスタイルの家づくりで大切にしたい、5つの設計感覚
ここからは、岐阜で家を考えるときに、ポートランドスタイルをただの見た目で終わらせないための視点をまとめたい。加藤住建が大切にしているのは、素材の選び方だけでなく、暮らしの動きや季節との付き合い方まで含めた設計だ。
深い軒が、外の時間を家のものにする
ポートランドの家にも、外とゆるやかにつながる心地よさがある。岐阜でその感覚を引き寄せるなら、深い軒はとても大切だ。強い日差しや雨をやわらげながら、縁側のような中間領域をつくってくれる。キャンプチェアを置いてコーヒーを飲む朝も、植物の手入れをする夕方も、軒下があるだけで暮らしの居場所は増える。
広さではなく、居場所の数を考える
大きなリビングひとつよりも、キッチン横の小さなカウンター、読書のできる窓辺、土間のベンチ、庭を眺める一人掛けの椅子。そうした小さな居場所が点在している家は、暮らしにリズムが生まれる。ポートランドスタイルは、開放感だけを求めるのではなく、少しこもれる場所を上手につくるのが似合う。
素材は、使いはじめより10年後を見る
無垢材、塗り壁、真鍮、鉄、リネン、タイル。こうした素材は、最初から完成された美しさではなく、使いながら表情が変わっていく。加藤住建が「五感で感じる木ごこちのいい家」を大切にするのも、見た目だけでなく、足ざわり、匂い、湿度感まで含めて心地よさが続くからだ。ポートランドスタイルにおいて、経年変化は劣化ではなく、記録である。
DIYできる余白を残す
最初から棚も収納も完璧につくり込みすぎると、暮らしが入り込む隙間がなくなる。子どもの成長や趣味の変化、集めるものの変化に合わせて、後から足せる余白がある方がいい。リビルディングセンターで見つけた古いフックや建具を活かすなら、なおさらだ。住み手自身が参加できる家は、愛着の深まり方が違う。
整えすぎないことも、美しさになる
ポートランドスタイルを目指して、黒いアイアンやサブウェイタイルを詰め込みすぎると、かえって記号的になってしまうことがある。本当に心地よい家は、少し抜けがある。余白があり、光にむらがあり、使い込んだ家具が馴染み、植物の影が揺れる。完成されたショールームではなく、未完成の余韻が残る住まい。そこにこそ、暮らしが入っていける。
POINT
加藤住建が考えるポートランドスタイルは、海外の意匠をそのまま写すことではない。岐阜の気候に合う深い軒、木の質感、平屋の落ち着き、自然素材の経年変化を土台にして、その上に古材や家具、道具、趣味の時間を重ねていくことに価値がある。
新築でも、ヴィンテージな空気はつくれる
ヴィンテージな雰囲気は、古い家でしか出せないと思われがちだ。でも実際は、設計の考え方と素材の選び方、そして住み方で、その空気は十分に育てていける。
たとえば床は、光沢の強い均一なものより、節や木目の表情があるものを。壁は真っ白でフラットに整えすぎず、少しやわらかな陰影が出る素材を。キッチンはすべてを隠すより、道具が少し見えるくらいがいい。見せる収納は生活感ではなく、手を動かして暮らしている証になる。
玄関には土間を広めに取り、キャンプ道具や自転車、植木鉢、古いスツールが似合う余白を。窓辺には本を積み、日当たりのいい場所に植物を置き、休日にはレコードをかけながら棚を組み立てる。そんな小さな積み重ねの先に、家は「新築」から「自分たちの住まい」へと変わっていく。
ポートランドスタイルを、岐阜の暮らしに合わせて
ポートランドスタイルの家づくりは、古材やアイアンを取り入れることだけではない。好きな家具を少しずつ集め、植物を育て、音楽を聴き、休日には自分で手を加える。そんな日常を受け止められる住まいをつくることだ。
岐阜には、山や川、季節の光、木の文化がある。その土地の心地よさを活かしながら、深い軒や無垢材、塗り壁、土間、ヴィンテージ家具が似合う余白を重ねていく。海外のスタイルをそのまま真似るのではなく、自分たちの暮らしに合わせて編集することで、家は長く愛せる場所になっていく。
完成した瞬間だけが美しい家ではなく、傷や色の変化まで思い出になる家。10年後、20年後に「この家でよかった」と思える住まい。それが、加藤住建の考えるポートランドスタイルであり、ヴィンテージな暮らしです。
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KATOJYUKEN / VINTAGE LIFE MAGAZINE